表紙モデル:菊池亜希子
私にとってのベーシックをアップデートしよう
ジム・ジャームッシュ監督の映画『パターソン』をご覧になっただろうか?
バス運転手の夫・パターソンと、休日にカップケーキを売る妻の一週間を描いた映画だ。
毎朝同じベッドで同じ時間に目覚め、仕事に行き、同じ時間に帰宅して、ポストの立て付けを直す。大事件はほぼ起こらない。でも、出てくるみんなが、何かによって自分の日々をドラマにする。
ある人にとっては恋だったり、チェスだったり、通販でギターを買うことだったり。パターソンにとって、それは詩を書くことだった。妻への深い愛だけではない。マッチ箱ひとつでも詩によってドラマになりうるという事実に、ハッとする。
この映画を観てから、詩がとても気になるようになった。詩集を読み、友人に詩集をプレゼントして、この号では詩をテーマにした企画も実現させてしまった。
これがある編集者の新しいベーシックだ。
すごく好きなことや、ものや、人に出会って、いつのまにかそれが自分の一部になっていくこと。それを繰り返して、この世に1人しかいない自分になっていく。新しいベーシックに心を開いていれば、いつでも、いくつでも、新しい自分が生まれる。